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空のごとく海のごとく
プロローグ 空に浮かぶ白亜の城。壮麗かつ壮大なその佇まい。崩れかかった岩壁が城の底を包んで守っているかのようだ。また、城を取り囲む水の流れる庭園は色鮮やかな花々が咲き乱れている。まるで一年中春なのではないかと人々に思わせるだろう。 そして、ちょうど城の南西の方角にある神殿近くの通路を少女が全速力で走っていた。裾の長い白いローブの上に目が覚める青いボレロを羽織っている。清楚な感のある一五歳位の少女だ。 彼女は傍目も気にせずに一直線に城の外郭部分、つまり城と空の境界線に向かって駆けている。 「……まだ、誰も、気付いていないわね」 息を切らせながら自分に言い聞かせる。 彼女の周り数百メートル以内には人がいないのは確かだった。 何故なら、今のこの時間は、城の住民は全てこちらの神殿とは別に城中にある礼拝堂で祈りを捧げているはずだからだ。 そうこうしている内に彼女は城の断崖部分に着いた。 「すごい……こんなにこの城が地上と離れていたなんて」 眼下に臨む限りなく広がる紺碧の海、その手前に淡く薄い白い雲。そして、城塞を支える岩璧。 「まさに天と地ね」 そこで、彼女は軽く瞑目して、何やら呪文のようなものを唱えだした。 「空と大地を渡りし者よ 願わくば我が肩に金色なる翼を与えよ」 唱え終わるのと同時に彼女の全身が黄金の光に包まれ岩の床から浮き上がった。その光は翼となってはためく。 「行きます……。さようなら私のエルグレイド……」 一つの咳きを残し、光は海のある地上に向かってゆっくりと吸い込まれていった。 <了> プロローグ 第一章へ続く |
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