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「世界は俺色に染まる」 
〜迷走編〜


「だからって!!」
 こういうことは早く言えよ! と居候・千秋の前をずんずん歩く南都が一週間後の町中にあった。
 きしくもそれはクリスマス・イブの日だったりする……!
「そんなに怒るなよ」
 南ぁー都、なんて言って後ろからついてくる居候が心底恨めしいと思う南都であった。
 嗚呼、この居候……世の中を舐めているとしか思えないッ! と南都は憤慨中なのは言うまでもなく。心中では、信じられない……、信じられない……! が連呼&こだましていた。
けれど、この居候……南都の怒りなどまったく気にすることもなく……。
 南都南都南都と――ッ
(しつこいッ!)
 とうとう南都の足はぴたりと立ち止まり、くるりと方向転換した。
「南都南都と……町中で大声で呼ばないでよ! 恥ず――」
 ――か、しい……。
 南都は我慢の限界だったが――睨んだ先を見て……固まった。
 カッと血が昇るのが南都自身が分かるぐらいに勢いよく頭に血が昇った。もし血圧メーターがあったなら限界まで一気に上昇し、測定不能としたのは間違いない。
 嗚呼……何でコイツはこんなに余裕な表情なのだ……。
(私が怒ってるのはッ! 何で怒っているかと言えばッ! 元を正せば……ッ! コイツがッ! コイツがぁッ!!)
 怒りのメーターが振り切れてしまうと返って言葉は出てこないものだ。吐き出そうとしていた言葉の数々が南都の喉元で交通渋滞を起こしている。
「――……ッ」
 ばっと南都は余裕の居候に背を向けた。
 肩はまだ怒っている。しかし、豚に真珠、馬の耳に念仏、糠に釘! な奴を相手にしたって……!
「!」
 突然、無視して先行こうとした南都の視界が淡く白一色になった。
(――え……)
 ぱさり。
「……――」
 一瞬閉ざされた南都の視界が捉えたものは――、
 乳白色のマフラー。
 それは南都の視界を奪っい、行く足を引き止めたウ゛ェールだ。
 ――そして、
 南都は茫然と眼を瞬かせた。
 両肩から伸びるマフラーの穂先。軽く触り心地の良いそれは――。
 南都が千秋の買い物が終わるまで覗いていたショーウィンドウに飾られていたものだ。
「――今日は」
 南都は不意に仰向いた。 南都の両肩を真後ろから掴む居候と南都の身長差は案外、ある。だから、上向けばバッチリとお互い表情はうかがえて。
「ありがとな」
 眼鏡の奥の双眸。
 細められた眼は深い茶褐色で――。
 ぽかんと開けられた口がマフラーに隠されていることをさすがに南都は感謝した。
 ああ……本当に。
(コイツは――)
 いつも嫌味な笑みばかりに表情筋を使っているというのに、こういう時だけは――……。
「…………」
 だんだんとイルミネーションが灯されていく。夕方五時も過ぎればもう夜も同然。きらきらと輝きだす今日は奇跡の日、見渡せば周り中に恋人たちが溢れていた。
 そんな真っ只中、南都は考える。
 紙袋を持ちなおす男前。
 どう見ても南都の連れと分かるこの状況下で、傍目からは荷物持ちの彼氏にしか見えないだろう。
 紙袋のお陰で今日という日に男前度を上げているが……。
 だが――、……しかし!
 片手では持つのが大変だろうそれら全ての紙袋の中身、今日買ったものは――……。
(絶対、詐欺だと思う……!)
 すべて居候・千秋自身の普段着、だったりする……。

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