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「世界は俺色に染まる」 「…………」 さらりと言われ、思わずスルー仕掛けたが、 「別にあんたが他人の幸福(しあわせ)に貢献しなくってもいいってこと」 今度こそ俺の心臓は高鳴った。見るのが恐い。きっと迷うことなく俺に向けている、その双眸を。 人間は想像以上に――。 いつの時代も気が付かされ、思い知らされ、すぐに忘れてしまうこの事実に。 「俺はこの木と同じか?」 シニカルに笑むはずだったのにまったく笑えはしなかった。 「千秋ってプライド高いよねえ」 呆れたように彼女は俺に告げた。 「自分で分かってて知らないふりするんだから」 「どういう意味だよ……?」 「そのまんまよ。そのまーんま!」 と言った彼女は一歩前に出て、 「もっと素直に生きれば?」 背伸びがてら向き直った。 「…………。俺はいつだって――」 「嘘ばっかり、それのどこが素直だっていうの。この意地っ張り!」 「――――なっ」 「そんな顔で言っても説得力ないし」 「…………」 そうまで言われれば、俺だって黙らざるを得ない。そんな俺を彼女は見つめ続けている。 「笑って――」 真実を。 「嘘をつくのは」 飲み込むのは。 「つらくない?」 「――――……」 ツラクナイ、ワケ、ガ、ナイ――……。 でも、それを引っ括めて――……すべてを――すべてを承知で。俺は。 そう思うのと同時に。 心は破裂しそうなのに。 ……――それでも。 「つかなけりゃならない……嘘も、ある」 「つらいでしょ」 「それでも、だ」 「…………」 「それでも、なんだ……」 最近、出来うる限り考えないようしてきたあの人との思い出が堰をきったように溢れ涌いて。 もう……どうしようもなかった。 止められは、――しない。この想いを。 嘘も真実もあったもんじゃない。心と体はばらばらだ。 そこに残るのは単なる俺の弱さで。 俺の顔はきっちりと微笑えているだろうか。いや、微笑わなければならない。 「これから、……何処へ行くの?」 「…………」 「そんな顔して――」 俺へと伸ばされる手。 「手放したく」 間近に迫るその小さな手をやんわりと俺は握りこんだ。 「――ないんでしょう?」 それでも、だ。 手放しても、 「あの人には――」 俺は南都の手を引いた。ドンと俺の胸に倒れこむ彼女を強く抱き締め、 耳元に唇を宛てた。 ――幸せになって、もらいたい。 「……ッ……」 キュッと彼女は俺の服を握りこんだのが服伝いに伝わる。 「……そんなの」 彼女の手は小刻みに震えている。 「そんなのないよ……! あんたの幸せは? 千秋あんた自身あんたの幸せは……何処に。私は――千秋!」 ――……千秋自身に幸せになって、もらいたい……! 「…………」 ああ――。願わくば。 大声で泣きだす彼女を抱えて、俺は夜空を仰ぎ見た。 ホワイトクリスマスになる気配はない。それどころか澄み渡る空は清々しく快晴だ。 仰ぎ見た空には、都会の下としては少し多めの星が瞬いて、目を細めれば今にも零れ落ちそうに揺れている。 ああ――。願わくば。神様。 瞳を閉じると、俺の頬に一筋の線が引かれた。 この、……――どうしようもない俺を。 ――救済ってください。 |
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