home(フレームなし)>創作場>オリジナル小説>空のごとく海のごとく>第一章 第二節 3
空のごとく海のごとく
第一章 始まりは突然に
第二節 出港
どこまでも青い空、一面の青い海――ガブリ海。 シャン港から船が出港して、数分で港は見えなくなった。 ここは船の上、セレスは船の先端の甲板に立っていた。勿論、その隣にはウィムがいる。 風を真っ向から受け、ウィムは煩わしく前髪を掻き上げる。 コートの胸ポケットからサングラスを取り出す手は日に焼けてほんのり褐色ぎみた肌、やや節張った関節がしなやかな筋肉を強調させている。その瞳は美しい珊瑚の砂浜を思わせる砂色だ。 「ん?」 「いえ、何でもありません」 ウィムに促されるまで、セレスは彼をまじまじと見つめていることに気付かなかった。 慌てて視線を逸らして、船縁を握った自分の手を見つめた。すると、さり気なく伸ばされた節張った大きな手は自分を覆って船縁を握った。 「寒くないか?」 重低音の、けれど良く通る声が尋ねてくる。 首を軽く曲げると、砂色の瞳は暗褐色のガラスを通して優しくこちらを見ている。 (詐欺だ――……) と、セレスは嘆息した。 <続> |
home(フレームなし)>創作場>オリジナル小説>空のごとく海のごとく>第一章 第二節 3