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空のごとく海のごとく
第二章 明かされる真実を胸に
第二節 決意
サリに見つからないで、脱出できる確率は低いとバルバ自身覚悟していた。また、サリよりも危惧するところにあるのはセレスのほうだった。もしもセレスに見つかれば、後追いされる可能性が強い。 そんな危険なまねはセレスにさせられない。 だから、朝日の昇る寸前をその決行に選んだのだ。 ただ一つ計算違いがあったとしたなら――……。 (眠れない……) いくら寝返りを打っても、羊を数えても眠れない。 だから、明け方の慌ただしさに気付いてしまったのだ。 セレスは何が起きているのか気になってその部屋を出てみることにした。 すると、 「これは一体どういうことだ?」 サリは大いに苛立った声でウィムに問うた。 「私が知らないとでも思っていたか?」 「……。やっぱ気付いた?」 船首の甲板で、ウィムとピオーネは手を後頭部に回し、立たされていた。 「航路を変えるということがどういうことか分かってるだろうな」 赤薔薇の眼が刺々しくピオーネを見た。ピオーネは震え上がっている。バルバも恐ろしいがサリも恐ろしい。 「こいつは俺が脅したんだから、叱る必要ないぜ」 「貴様は黙ってろ」 (そろそろだ) ウィムは眼を細めた。 そろそろ――、 ドン!! 船を大きく揺らす爆発が轟いた。 「!?」 皆がその音に気を取られる中、動じなかったのはウィムとサリだけだ。 「貴様の仕業か」 「…………」 壮絶なにらみ合い。 「俺は言われた通りのことをしたまでだ。この爆発したエンジンを直せれば、グレードアップできてるぜ」 ウィムはニヤリと笑んで、唯一直せる機関士を人質に先端まで後ずさっていく。 「信じられるか」 これにはサリも手を出せない。猛然とにらみ返す。 「悪いが俺も多忙でね」 というと、ウィムは船縁に上った。 「!?」 さすがにサリもその行動には驚いた。 何をする気だ!? ここは遙か上空、眼下は暗い海だ。 「ウィム!!」 状況はよく分からないが、ウィムが今危険にさらされているのは確かだ。考えるより先に動いていた。セレスが飛び出した。 はっと振り返る。まさかセレスが出てくるとは!? まだ寝ている時間のはずだ。 ウィムは焦った。 「来るな!!」 ウィムとサリが同時に制止の言葉を投げた。だが、セレスは聞いていない。 仕方なくウィムはピオーネを手放し、宙を舞った。 その足をセレスは捕まえた。しかし、当然セレスが支えきれるものではない。船縁に半分以上、はみ出して――……!! その身体をサリがしっかりと捕らえた。 けれども、ウィムはセレスの手から滑り落ちていく。 ――――忘れるなよ。約束。 セレスは風の激しさの中、最後のウィムの言葉を聞いた。 <続> |
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