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空のごとく海のごとく
第二章 明かされる真実を胸に
第二節 決意
顔は洗った。服装も整えた。髪も三つ編みに結んだ。 鏡に向かって自分を確かめ、鏡の自分は両手で頬を二回叩いた。ウィムが買ってくれた服はさしずめ戦闘服だ。 セレスは鏡から目を逸らさずウンと頷いた。 これで気合いは十分だ。 これからは自分で何事もしなければならない。 ――――……『手段』を選ぶな。使えるものは何でも利用しろ。 そう、ウィムが言ったことは正しい。自分は何も持っていない。『手段』を選んでいる暇などないのだ。 まずは交通の足が欲しい。何もない――……訳ではない。 ウィムの言葉は全てを用意しておいてくれた。 あるではないか。とっておきの交通手段が。 利用しろとは機転を利かせろということだ。 この飛空挺の所有者サリ・ステライアと交渉する。味方につけろということがウィムの指し示した正解だろう。 セレスは扉に向かった、すると――、 トントン 外からノックされた。 現れたのは黒目黒髪の長身の男だ。 「あなたは――……」 「……お嬢。慌ててどこ行くんだ?」 セレスは硬直して目を瞬いた。 ジルクード・ダッチは前と全く同じ台詞に微苦笑を漏らした。 「あなたの名前は――……、なんておっしゃるの?」 「俺の名は――……」 はて? 前に名乗ったような気がする。まじまじとセレスを見た。その大きなオレンジ色の瞳は知らないと暗に言っている。 「俺の名はジルクードだ。ジルクード・ダッチ」 なんとはなしに苦笑いが浮かぶ。 ジルクードにとって初めて交わすセレスとの会話だった。 <続> |
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