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空のごとく海のごとく
第三章 風は嵐となりて
第一節 目的
その頃、セレスティ・アラインは空賊船にはいなかった。 切り立った丘、まるで天を貫くかのようにそびえ立つ大樹。世界樹と呼ばれる樹を有する国――ロカ・ダーツにいた。ステライア空賊団の隠れ家はここにあったのだ。切り立つ谷間を抜けると大がかりな入り口があり、近づくとその門は開かれた。 賊長のサリ・ステライアに誘われ、昇降機を上り階段を上ると――、そこは豪華絢爛な寝室に出た。 「驚いたか?」 セレスの後ろからやって来ていたジルクード・ダッチが自慢げに声をかけてきた。 「え、えぇ……」 セレスはそれ以上言葉が出て来なかった。 あまりにも空賊の想像がセレスの考えていたモノとかけ離れていて、面食らってしまったのだ。 次に出てきた言葉は――。 「あ、あの!! 本当に空賊なんですか?!」 「―――――……」 セレスはまじまじと穴が空くほどジルクードを見つめた。ジルクードはというと呆気にとられて口をあんぐり開けている。 「――――ッぷ……」 沈黙を破ったのはサリだった。 「いいぞ。セレスティ。面白い!!」 「――――……」 心底サリはウケている。今にもお腹を抱えて笑い出しそうだ。 「――……お頭ぁ」 「――……あぁ、悪い」 情けなく咎めるジルクードを宥め、サリは言った。 「セレスティ。空賊なんてやるには金が必要なんだよ」 サリはにっこりと笑顔を向けた。 「ジル、一刻後には出発する馬車の用意を。セレスティ。ここからカイザル共和国まで少し長旅になるが我慢してくれ」 サリは返事を聞く前にその部屋を出て行ってしまった。 セレスはジルを見上げた。 「サリはどういった人物なのですか?」 ジルクードは髪を掻いて、微苦笑を浮かべる。 「あなた達は何なんですか?」 セレスの口から出てくるのは疑問質問ばかりで、ジルクードは困り果てるのであった。 <続> |
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