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空のごとく海のごとく
第三章 風は嵐となりて
第三節 再会
ダレスの憤りは頂点に達していた。頂点どころか宇宙の果てまで飛んでいっている。今は自宅の自室にいた。狂乱じみた叫び声は屋敷中に轟き、何も知らない召使い達は嵐が去ることをただじっと待つのみだった。ダレスの両脇に佇む執事と秘書。生きた心地がしないことは顔を見れば明白だ。ダレスの怒りがそれで収まるようなものじゃない。 「…………」 ――――三日……。三日です。ハーバーが調査にかかる日数は。ハーバーは有能ですからそれ以上はかからないでしょう……。 甥っ子の口調は穏やかだ。 ――――その間に自分の身の振りようを検討してください。 「…………ッ」 拳を握る皮膚から血が滲む。握り込んだ爪が己の手の平に食い込んでいるのだ。 「……おのれぇ……ッ」 痙攣したように唇が震える。 「……――バルバめぇ……」 あまりのどんでん返しぶりにもう頭が張り裂けそうだった。身の振り方を考えるどころではない。不幸中の幸いなことに、あまりにも天晴れな逆転負けを期したことがそこら辺について考えること麻痺させていた。 何か……。 ダレスは下唇を噛みしめた。じわりと血が滲みだす。 何か――……。 一矢を報いられないだろうか――……。 否!! (必ずや、一矢を報いる――!!) 「――ダレス様……」 ダレスは瞳だけを動かした。鋭い刃物を突きつけられたように秘書は震え上がった。 「かくなる上は積めるだけの財産を積んで――……」 「馬鹿を申すな!! わしはバルバに一矢報いなければ気がすまん!! 何故に逃げなければならん!?」 「ですが、ダレス様――……」 怒鳴られて縮み込んだ秘書の代わりに執事が言葉を繋いだ。 「一矢報いるにしても力が必要かと……。私どもにそのような――……」 「力は――……!!」 執事の言葉を遮ったのはよいが――……。勝てる方法も勝算もない。 大きく口を開けて止まってしまった。 (――……いや、待てよ……) ダレスがいつ特大の癇癪を落とすかと執事と秘書はびくびくしていると――。 「――……ある」 力――なら、ある。 「?」 特大の力なら……、あるではないか!! ――天空石が――……。 ダレスは、ほくそ笑んだ。 <続> |
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