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空のごとく海のごとく
第三章 風は嵐となりて
第三節 再会
セレスは後ろ手に縛られてベットの上に座らされていた。 「ははは!! あの顔を見たか!? あの間抜けな面を!!」 その頃ダレスは大いに喜んでいた。あのバルバの悔しそうな顔といったら!! 最高だ!! 「いいぞ。いいぞ。やっとわしにもツキが回ってきたようではないか」 そう言って蛇のような目をセレスに向ける。 「あとはお嬢ちゃんが天空石の在処を教えてくれればいいんだよ」 ダレスはくいっとセレスの顎を持ち上げた。その瞳は至極反抗的だ。 「……だれが――あ、なたなんかに……!!」 「そんなことを言ってられるのも今のうちだ」 「!?」 ふいにダレスは持っていたワイングラスを傾けた。細い糸のごとく紅い液体がセレスの口めがけて落ちていく。顎を押さえられているので回避することが出来ない。途端にむせかえる。 「美味しいか。上等のワインだからな」 ダレスは意地悪げに笑う。 「今度、反抗的な目をしたらもっとひどい目に遭わせるぞ。いや、愉しい目かな」 「…………」 「おまえは美人だ。天空石がなくてもその価値はあるだろうな」 ダレスがセレスを睨め回して、下品に笑む。セレスは蒼白になった。初めてこのような感情を剥き出しに迫ってくる人間を知ったのだ。ウィムがあれほどセレスに一人旅をさせたくなかった理由がやっと理解できた。無力感が押し寄せてくる。ウィムが、サリが、ジルクードがどれだけ紳士的だったか。ウィムに至っては同じベットで無防備を曝していても、何もしてきはしなかった――……。 「時間はたっぷりあるからなー……」 ドーォォォォォ……オオオオン ダレスが全て言い終わる前に船は凄い振動に襲われた。立ち上がりかけたダレスは顔から無様に倒れ込み、セレスも転がった。落ちてくる花瓶を避けると、甲高い音を立てて割れる。咄嗟にその破片を握った。 「何事だ!?」 ダレスは廊下に飛び出し叫んだ。 セレスはそれを見逃さなかった。その破片で自分の手を拘束する縄を切って部屋から飛び出した。ここが空の上ならたとえ船から落ちても助かる道はある!! 「!? ッコラ!!」 セレスはひたすら逃げた。 <続> |
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