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続く未来
side b
全てに決着がついた後、長秀は笑みを零した。「これで良かったんだ」と言って――。 以前と変わらない態度と振る舞い、笑顔で、その後も彼は彼らしくあったから誰も気がつけなかった。 彼が消滅したことで、最も心に痛手を負ったのは直江ではなく――……、他の誰でもなく、 「――――」 今こうして目の前で背を丸め、俯いている彼の背は怒っているようにも、泣いているようにも見える。 ――安田長秀だったのだろう。 ※ ※ あの奮戦の中で辛うじて生き残った色部と長秀は、その後直江と晴家と再会を果たした。彼らから事の顛末を聞き及んだ色部と長秀は、このとんでもない惨状の処理を彼らと協力して行った。そうしてほぼ、終了したのは初春、皆で桜を見に行こうと約束した矢先の事だった。 突如、長秀が姿を消した。 今思えば、彼が消滅して、一つも態度を変えなかった長秀の方がよっぽど変であったのだ。 彼の危機にあれだけ取り乱し、無茶な戦い方をした彼が、本当の意味で普通にしていられるわけがなかったのだ。 「長秀……」 返事は、ない。代わりに頬から一瞬煌めいたものが落ちるのを色部は見た。 長秀が眺めやる海へと色部も無言で視線をそちらにやった。 執着は確かに直江のほうが大きかっただろう。彼の全てを欲し――手に入れた男。彼を手放さねばならない苦痛は当然のごとく、計り知れない。 だが、しかし、 直江には決着というものが存在した。 それだけの時間と最後を彼と共に直江は過ごすことができた。だからこそ、痛手は大きくとも踏ん切りがつく。直江は歩く道をを選ぶことができる。 しかし、長秀の場合は――、 色部は唇を引き結んだ。 四百年の人生、その決着を長秀は彼との決着であると解していた。彼に勝つことを、彼という強さを追いかけることを目指した人生。 その最後の結末が……。 色部は沈鬱な思いで無を噛み締める。初めて知った。なにも残さないと言うことの残酷さを。 直江は彼を最後まで抱きしめた。晴家は彼の心に触れることを許された。 「…………」 己は――。 色部は己が掌を眺め、握り開いた。 この手に収まる毘沙門刀――彼の愛刀・吉祥丸の化身。彼の形見にも等しい刀。色部は今もそれを握る時、彼を感じることができる。 けれど、長秀には――……。 「――――」 色部には、浮かばない。こうして俯く彼にかける言葉など……。 続く未来へ |
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